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2020年3月3日(火)

JICA経験同窓生:阿部哲史さん[1983年・昭和58年卒 第35回生]座談会/業種別ネットワーク推進委員会​(#04)​ ​

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ダイジェスト5 「剣道は生涯スポーツ」

阿部:昨年の5月、スポーツ庁の鈴木大地長官がハンガリーにいらして、私がいくつかの場所を案内することになりましたが、そのひとつとして合気道の講習会にお連れしました。会場で400人のハンガリー人が一糸乱れずに整列し、無言で合気道創始者の植芝盛平先生の写真に向かって礼をする様子をご覧になりました。それを見た長官は、「こんなに入れ込んでやっているのか。欧米スポーツの講習会でこういう光景はあり得ない。武道はすごい、良い勉強になりました」と大いに関心されていました。しかし、こういう世界は今始まったわけではありません。単に日本人が、海外でどのように武道が実践されているかを知らなかった。真剣に海外で実践されている武道に関心を寄せてこなかっただけのことなのです。

世界の産業界のなかで日本というと、どうしても自動車やハイテク機器といった物質文化の最先端を走る「すごい国」というイメージが強くあります。これは本当に素晴らしいことではあるのですが、肝心の日本人そのものはどう思われているのかというと、あまり芳しい話は耳にしません。30年前からの「働き虫」「過労死」のままなのです。もっというと、「日本人は外国人の目からみて魅力的な人間なのか?」と問いに集約されるのではないでしょうか。日本人はこれだけ物質文化を介して世界に注目されていますが、裸の日本人は、私の知る範囲で決して「魅力的」ではないようです。海外にいると否応なくこうした現実を目の前に突き付けられます。

↑2009年(平成21年) ルーマニア正教会での結婚式

スポーツや芸術は、人間同士が素のままで民族や国籍、人種を越えて交流できる活動ですから、日本人が国際的に自らの良い部分を発揮していくためには実に有効だと思います。そういう考えに立つと武道は、日本人の魅力、日本文化の特徴を十二分に海外に発信できます。現に、武道普及の流れを見ていると、これからも世界に普及していくことは間違いありません。ですから、なおさらのこと以前よりももっと真剣に武道の存在意義や、社会貢献のあり方を改めて議論すべきではないかと痛切に感じています。

小藤田:私は柔道部だったと云いましたが、海外で柔道をやっている人口は確実に増えている気がします。

阿部:フランスは柔道を国民教育に利用しようと過去30年間、政府が力を注いできました。その結果、日本の柔道人口が20万人を下回る今、なんと70万人もの柔道人口を保持しています。これが世界武道の潮流です。外来文化である武道を自らの社会に効率的に取り込もうとするヨーロッパ社会の動きは、決して無視するべきものではなく、もしかすると近い将来、日本が潮流に取り残される日が来るかもしれません。

内野:剣道も世界大会での高成績や、クラブ人口も増えていることを考えると今後の人気への期待も大きくなりますね。

阿部:正確な数値は分かりませんが、少なくともヨーロッパの剣道人口はこの20年で2倍の3万人ほどに増えているはずです。なぜこうなったか。簡単にいうと、還暦を過ぎても継続して楽しめる剣道の面白さにヨーロッパ人が気づき始めためです。想像してください、定年退職した初老の男性が集まってサッカーを楽しむ光景は世界中の公園や体育館で目にすることができます。しかし、その初老の男性たちが幼児や青少年、あるいは女性と入り交じってサッカーを興じる場面は目にしません。というのは、もともと欧米のスポーツというのが貴族階級の間で発生し発展した歴史をもつことでも分かるように、スポーツは階級社会のなかである程度枠組みが明瞭な形ができており、それが現在でもある程度残っていて、世代を越えて一緒にスポーツを楽しむという環境が意外と整っていません。はっきりいうと、老若男女が一緒に楽しめるような方向にルールや用具、指導法などそれほど考慮されることはなかったのです。それに比べると剣道は、幼児から高齢者まで男女が一緒に稽古を楽しむことができます。しかもそれが剣道特有の楽しみとして愛好者にも定着もしています。もともと武士の戦闘訓練方法であった「竹刀打ち込み稽古」は長い年月を経て今では安全に、健康的に、老若男女が一緒に練習を楽しめる文化になりました。こういったスポーツはヨーロッパでは育っていないのです。特に格闘技系の種目では。つまり、剣道はヨーロッパでとても特殊、かつ異なる世代が枠を越えて一緒に楽しむこと可能な「おニュー」な文化になりつつあるのだと思います。1960年代にヨーロッパに剣道が伝播してから徐々に理解が深まり、最近になって「生涯スポーツ」として定着しかけているというわけです。この先もますます剣道はユニークな運動文化として世界で市民権を得るようになると私は思っています。

内野:ハンガリーには義務教育はありますか。

阿部:ハンガリーは基本的に小学校8年、中等学校4年、大学が3-5年というシステムです。この中等学校の2年時まで、つまり15歳までが義務教育です。日本の中学3年生までと同じことになります。

内野:学校の体育教科で教わる種目にはどんなものがありますか。

阿部:ハンガリーでは広い校庭を有する学校はほとんどなく、冬も長くて寒いので体育の授業はほとんど体育館で行います。ですから、バスケットボールやバレーボールなど室内で行う球技系が授業の教材になっています。でも体育科は現在、大きな転換期を迎えています。実は10年ほど前、国の調査で国民の健康状態が悪化の一途をたどっており、2030年頃になると成人35歳以上の6割が糖尿病になる。そのため国家の保険機構が崩壊するというデーターが出されました。ショッキングな調査結果でして、これはまずいと考えた教育文化省は、子供に運動習慣を身に付けさせるように「毎日体育」という新しい方針を打ち出しました。具体的には、週5日の授業で毎日一度は体育を実施するというものです。実に画期的な方針ではありますが、急に授業数を増やされても体育の教員も困るわけで、まずは実施可能な種目を増やすことが課題となっています。柔道は以前から義務教育の体育教材でしたが、2年前から空手が教材として正式に採択されました。人気もある空手ですから当然、体育で実施する学校は多くあります。トレーニングウエアーでも練習できますので教材としても優れているわけです。しかし、現場では空手の指導ができる体育教員の数が全く足りていません。そういった事情もあり、私が出向教員として勤務しているハンガリー国立体育大学の格闘技学科では急遽、空手の専門コースを設置して教員養成に力を入れ出しています。

内野:人気の理由は何なのでしょう。

阿部:まずは健康的で、かつストリートファイトに利用できるという利点もありますが、そればかりではなく、やはり用具が安価でどこでも練習できることではないでしょうか。また、これは強調したいことですが技術練習と平行して躾を重視していることなのではないかと思います。

内野:ハンガリーの国技と呼ばれているスポーツは何ですか。

阿部:サッカーです。それ以外にもバスケットボールやハンドボールはもちろん人気スポーツです。でもハンガリーは伝統的に水球、ハンドボール、カヌー&カヤック、それからフェンシング、レスリングなどが世界のトップクラスです。なかでも世界No1を誇るのはカヌー&カヤックです。

内野:強いというのは国策で予算がついているからでしょうか。

↑1995年、ハンガリーに舞い戻った当時

阿部:はい、潤沢なくらい予算がついています。政府が予算をたくさんつけてくれる点でも潤っていますが、それ以外にも、例えば政府が認めたスポーツ種目の競技団体に対しては、企業が献金しても免税措置が取られることになっています。つまり、企業にすると放っておけば政府に税金として徴収されてしまいますが、好きなスポーツ競技団体に寄付すれば意味は同じとなるのです。また現与党は、とにもかくにも積極的にサッカーを支援します。票集めに最も効力を発揮するからです。スポーツの政治利用を日本人は嫌いますが、ハンガリーではごく当たり前、伝統的です。国民もそれに慣れています。いかにも旧社会主義国といえます。

内野:もう少し剣道を普及し、強化するために資金を募る方法はないのでしょうか。

阿部:私は一生懸命働きかけをやってきていますがなかなかお金は集まりません。愛好者数も少ない、宣伝効果が薄いので企業が支援をするメリットもありません。ハンガリーのスポーツ庁から国際大会の遠征費用を貰えることもありますが、それも微々たるものです。

内野:日本からの支援は?

阿部:笑ってしまうほどありません。丸山先生のような個人的な支援はありますが、それ以外は皆無ですね。在ハンガリーの日系企業にも支援をお願いしたことは何度もありますが、横並び意識が強く、他の会社が支援するならうちも考える、という調子で結局誰も支援してくれません。要はメリットが見込めないわけですから仕方ないと思います。

内野:その分知恵を出して阿部さんが苦労しながら剣道の普及をやってこられたのですね。

阿部:支援を得ようと思うのであれば、やはり剣道という種目の社会的な存在意義をもっと高めることが不可欠です。教育、文化、経済といった分野でありがたがられる付加価値ですね。世界中の剣道人がこうしたテーマについて真剣に模索しなければ今後、剣道という文化は発展していかないと思います。教育効果も認知されてはいますが、それを実社会のなかでどうアピールするか。ここまで話が発展していかなければ意味がありません。このようなことをいうと怒られますが、この部分では、特に日本人の発想は貧弱に思えます。日本での剣道は、お家芸であり、どんなに少子化といわれても存続自体が危ぶまれる種目ではありません。もっとはっきり言えば、「内向きにしかベクトルが働かない文化」「すでに出来上がってしまった文化」なんです。国内だけでも150万人が稽古していて、上手になれば進学にも役立ち、就職にだって有利に働くシステムができあがっています。おまけに老後まで剣道を楽しむことができ、下手すれば指導者として小遣いも稼ぐことができます。嫌味な言い方になりますが、何も苦労して今から新しい付加価値について頭を巡らせる必要はないほど成熟した文化ということです。比してヨーロッパでは、剣道の価値を剣道人が自ら必死に模索をしている段階にあります。ですから、一緒に剣道をしていても発想が創造的かつ幅広さを持っていると思います。一言でいうと、「楽しい」んですね。そういう意味で海外の剣道には、日本では体験できない楽しみ方がまだまだ見出すことができるのです。

宮川:話は変わりますがハンガリーの音楽文化はどうなのですか。

阿部:音楽家には素晴らしい人がたくさんいます。同時に音楽教育の普及も進んでいると思います。コダーイ・ゾルターン、リスト・フェレンツ(※フランツ・リストと同一)といった音楽家が世界的に有名です。コダーイは近代の音楽教育方法を確立した人で、日本の音楽教育者の間でも評価が高いので、わざわざ勉強しにハンガリーに来る日本人も随分います。コダーイの名前を冠した音楽専門小学校なども多数あり、そういった学校からプロの卵が育っていきます。有名なリスト・フェレンツ音楽院が街中にありますが、いくつものホールで行われる学生の演奏会は安価で楽しむことができます。日本とは比較にならないほど国民にクラシック音楽が浸透していると思います。

宮川:演奏会を安く聞ける施設がそんなにあるのですか。

阿部:あります。ちょっとした街ならどこでも公の音楽ホールがあり、立派な演奏会をやっています。週末は家族で正装をしてコンサートに足を運ぶ、というスタイルは前世紀から継承されています。

内野:ハンガリーに限らずヨーロッパでは家族と食事をして、そのあと正装で演奏会を聴きに行くという文化が根付いていますよね。

阿部:もう一つ、国民自身がハンガリーの民族音楽を誇りに思っている点が重要かと思います。剣道の教え子ひとり、といっても私より年配ですが、フェレンツ・コバーチ(Ferenc Kovacs)という男性音楽家がいます。彼はもともとオーケストラでトランペットとピアノとバイオリンを演奏していましたが、民族音楽に惹かれ、今は民族風ジャズという分野で人気を博しています。CDだけでも40枚以上出していまして、テレビにもよく出演しています。でも剣道が大好きで、五段を持つ「八風不動」というクラブの会長さんをしています。

↑1994年ミュージシャンのコバーチさん宅で自家製ワイン造り

藤原:弟子で指導者として成果を上げたとか、不毛のジャンルを切り開いたとかいう人はいますか。

阿部:剣道の教え子のなかでは、独立してクラブの会長をしている者が4,5名います。音楽家のコバーチ以外に自分の分野で活躍している人材としては、例えば2000年(平成12年)前後に労働大臣にシャーンドール・ブラーニ(Sandor Burany)という弟子もいます。今は野党のリーダーとして奮闘中です。それから92年に青年海外協力隊員として最初にハンガリーで剣道を教え始めた時、初めての教え子であったアルパード・ハボニ(Arpad Habony)は97年(平成9年)の京都の世界大会で優勝したメンバーの一人です。2000年(平成12年)以降に政治活動の道に入り、現在はオルバン首相の政策ブレーンの一人です。残念ながら政治家のバックで暗躍する人間として名が知れてしまっていますが。ハリウッドで映画監督やっているニムロド・アンタル(Nimrod Antal)という元教え子もいます。「コントロール」という彼の作品はカンヌで新人監督賞を取ったのを皮切りに世界中でいくつもの賞を取り、最後は2003年(平成15年)のオスカーで外国人作品賞にノミネートされました。現在はハリウッドで仕事をしていますが、有名な映画では「プレデター4」は彼の監督作です。「コントール」という作品、実はあまりにも製作費が乏しかったため、無料で多くの剣道関係者に出演を依頼して作られました。私も駆り出されて出演しましたが、誰も予想していなかった大ヒット作になりました。今でもたまにテレビ放映されていますが、そういう翌日は必ず誰かに、「あんた、映画に出てなかった?」と聞かれます。

実はハンガリー在住の日本人は結構、映画のエキストラとして色々な作品にでている人がいます。というのは、ハンガリー政府がハリウッド映画の撮影を引っ張り込むために大きな撮影場を複数、ブタペストの郊外に作ったからなのですが、アジア人が少ない国なのでエキストラ不足が続いているのです。ですから私も、稼ぎが少ない時代にアルバイトのエキストラとして何本かの映画撮影に参加しました。キアヌ・リーブス主演映画の「47RONIN」、ブルース・ウイルスの「ダイハード5」などがそれです。俳優扱いではないのでどこに映っているかも分からない程度ですが、異なる専門分野の現場を垣間見るのはとてもいい勉強になるので気に入ったアルバイトのひとつでした。最後に行った撮影は、マット・デイモン主役の「オデッセイ」の撮影で、NASAのアジア系掃除夫でした。私の写っていた部分はカットされてしまっていましたが、撮影現場で世界的に名の知れたリドリー・スコット監督に会えたのは嬉しかったです。エキストラのバイトは大事な副収入源でしたが、最近は忙しいので足が遠のいています。

↑2012年(平成24年)映画「47RONIN」にエキストラで出演(左から2人目)

藤原:阿部さんはハンガリーのスポーツ外交賞をスポーツ局から受賞し、秋には秋篠宮の次女の佳子親王に接見されましたよね?

阿部:はい、2019年(令和元年)は日本とハンガリーの外交150 周年にあたり、佳子様にはその関連行事で10月にお目にかかりました。長年、現地にいるがゆえに声がかかる話でして、決して特別な理由で選ばれたわけではありません。それにしても光栄なことです。スポーツ外交賞というのはハンガリースポーツ庁が選出しますが、スポーツを通じて国際交流に貢献した個人と団体が受賞します。個人で2名、団体では3か国の大使館が受賞しましたが、私は個人として頂きました。

 

内野:教える側として大事にしてきたことはありますか。

阿部:剣道の試合で優勝したい、高段位を取得したいと願う人は多く、28年間でヨーロッパの個人タイトルを男女合計で15人排出しました。しかし、その彼らが年を取って剣道をやめてしまうようであれば、私は指導者として失格です。剣道は死ぬまで続けることができる武道だからです。やめるということは、剣道の本当の面白さを彼らに十分に理解させることができていなかった、ということになると思っています。ですから一番大事なことは、生涯にわたってずっと剣道を続ける剣士を育成することで、そのためにも、私自身が齢(よわい)を重ねても高いレベルの剣道ができることを自らが証明できるようにしなければなりません。

内野:阿部さんより年配者で剣道をなさっている方はいらっしゃいますか?

阿部:ハンガリーで私より年上の剣士は数名います。でも、西ヨーロッパにいくと70代の剣士は珍しくありません。段々と生涯スポーツとしての剣道が理解されているのだと思います。恩師である丸山鐵男先生は90歳まで道場で指導をされていました。私はこの20数年間、帰国するたびに先生に稽古をみていただいてきましたが、私にとってはそれが何よりも幸せな時間でした。だから、私もまずは丸山先生のように高齢になるまで稽古を続けたいですね。それが剣道家としての一番大事なことかもしれません。

宮川:弟子はいないのですか。

阿部:自分では、ハンガリーの剣士全員が弟子だと思っていますが、実際には2000年(平成12年)に「ハンガリー日本剣道クラブ」という組織を設立して会長を務めています。現在、60名以上の会員が在籍していまして、毎週2回私が指導しています。日本で本格的に稽古したいという教え子もいて、何人かを送り込みもしました。後継者として期待したわけです。しかし、どの若者も日本に帰化してしまったり、日本の会社に就職してしまったりでハンガリーに戻ってきません。最近も中学生の時から日本留学をさせ、国士舘大学の大学院にまで通わせて世界大会で3位を2回も取らせた28歳の男がいますが、日本の女性と結婚してしまいやはり戻ってきません。人材を育てるのは難しいですね。まあ、それはそれで立派に剣道を続けてくれているのであれば嬉しい話ですけれど。

内野:後輩に一言アドバイスを頂けますか。

阿部:最近の日本の若い人に対して、人生に対して守りに入っている。あるいは一般的な考え方の枠のなかで大人しく生きているという印象を強く受けることがあります。私があまりも変わった人生を歩んでいるせいでもありますが、もっと「外向き」な発想で人生を楽しむべきではないかと思うことがあります。人生は一度しかありませんから、やりたいと思ったことは多少のリスクを負ってでもトライすべきというのが私の考えです。あとで後悔するのはいただけませんから。それと、海外に出て損をすることはないと思いますので、積極的に外で勉強や仕事をすることを目指して欲しいですね。

ただし、海外に出るためにはまずは日本の事をしっかり学ぶことも忘れないで欲しいです。特に日本語と日本文化を。これは、なによりも強調したいです。外国に出れば誰でも「日本人として」否応なく外国人と接しなければなりません。そういった場面でわれわれに求められることは日本人としての知識、良識です。これは日本の言語、そして歴史や文化を学ぶなかで培われるものです。英語がどんなに上手であっても日本人は日本人であり、周りの人も日本人としてわれわれと接してきます。気負うほど意識する必要はありませんが、われわれの意思と関係なく日本人として生きなければなりません。外国語はもちろん武器として必要ですが、あくまでも言語はコミュニケーションを取るための手段であって目的ではありません。外国語を使って外国人に対して「何を」発信するのか。この「何」の部分がわれわれにとっては、日本語と日本の歴史文化だということです。

内野:最後に、今後の予定はありますか

阿部:現在、私は国際武道大学の教員として、ハンガリー国立体育大学に出向というかたちで仕事をしています。具体的には、ハンガリーにいて国際的な交流事業の戦略・計画を立て、プログラムを実施して日ハン両国の人材育成を手掛けています。例えば、ハンガリー国立体育大学はオリンピックの金メダリストをこれまでに110人も出しているスポーツの名門校ですが、この大学が世界で初めて武道学科を作りたいと言ってきているので、国際武道大学としてその実現に向けて協力をしている最中です。実に面白い試みだと思っています。

↑国会議事堂をバックに

私はこれまで競技団体、つまり社会体育の枠のなかで剣道の普及発展に努めてきましたが、今感じていることは限界があるということです。本当の意味で剣道なり武道を安定した文化的な活動として社会のなかで定着させるためには、ハンガリーならばハンガリーの、ヨーロッパならばヨーロッパの教育システムの中にしっかりと組み込まなければ実現しません。今ようやく、身近な大学で武道学科設立の可能性が高まってきましたので実現させたいです。そして、こうした拠点を世界各地に作り、世界中の若者が武道を通じて相互理解を深め、健康な人生を送ることの基礎にできれば素晴らしいと考えています。

小藤田:本日はどうも有難うござました。これからの阿部さんのご活躍に期待しております。

【取材】2019年(令和元年)11月

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